『のぼうの城』を読んだ感想。
この小説は、歴史ものです。時代は戦国時代後期。
豊臣秀吉が、天下平定のためにいまの関東地区を攻めたときの話。
そのとき、北条氏がその地域を治めていた。(鎌倉時代の北条とはまた別ものらしい)
豊臣秀吉は、織田信長が本能寺の変で倒れ、その後をつぐように四国、九州を支配下に置き、後は関東と東北地方を残すのみの状況。
特に抵抗している関東の北条氏を何倍の兵力をもって攻め落とそうとした戦い。
(東北の勢力は、戦いの際に豊臣方についたそうです。そのため北条氏を攻め落とせば日本が豊臣の支配化になる)
圧倒的な兵力に降伏する城が多い中、本城が落ちてもなお落城せずに戦いつづけた城があった。
この城が今回の話の舞台になる忍城。
なぜ、城方の何倍もの兵力をもってしても豊臣方は攻め切れなかったのか。
ここに興味が引かれた。
忍城を攻めた豊臣方は、石田三成を総大将とする総勢2万3千。石田三成はのちに関が原の戦いを起こすあの人です。
それに対して、城方は約2000 (このなかには正規の兵士のほか、百姓なども混じった数)。
約十倍もの兵力差。
はたからみたら城方に勝ち目なしという状況。
さまざまな戦いがあった戦国時代で大軍をしりぞけた戦いには、例えば関が原の戦いの際に徳川秀忠軍を足止めした、上田城真田氏の例がある。
この戦いに参加していた城方は、戦国時代きっての知将、謀将と名高い真田昌幸や、真田幸村(のちの大阪の冬の陣・夏の陣で活躍する有名な武将)。
このような武将が城を守って相手方を翻弄しついに守りきったという話がある。
真田氏の知恵がおおいに発揮された戦いだったそうです。
ならばこの戦いにも、きっとそんなすごい武将が守っていたからに違いないと、城方の総大将の名前。
その名は成田長親。
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申し訳ないがいままで知らない名前だった (たぶん世間的にもあまり有名ではないのでは?失礼ですいません)。
むしろこの城には甲斐姫と呼ばれる姫がいたそうだが、最近ゲームにも登場しこちらの方が世間的に有名のはず。
世間ではあまりメジャーではない大将だが、何倍もの兵力を前に籠城し続けたというくらいなのできっといままで知られてないだけで実はすごい人だったのではないか。
大軍に攻められて支えきるには、よほどの策士か軍略家なのか
と思う
が
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どうも違うらしい。
この成田長親は、すすんで農民の畑仕事を手伝う
( おおなんだか庶民派!)
しかし不器用なためあまり役にたっていない。
( ただの親切の押し売りみたい状態?)
武術はからっきし、馬にものれず、
( 戦場でうごきまわるわけでもなし・・・)
体格は、『とびぬけて背がたかく脂肪がのっているため横幅も広い。ただ大きい。どちらかといえば醜男』
( なんだかいまいちぱっとしなさそうな外見・・・)
領民から『のぼう様』と呼ばれている。
( それってつまりどういうこと・・・)
『のぼう様ってなに?』と思われるかたは本の中で。
この様子からでは、策士でもなければ武術の神様でもなさそう。
そんな人物が、2万の大群を相手に籠城を続けたという事実。
摩訶不思議ですが興味深い。
戦いの詳細は本を読んでみていただきたいのですが、
この戦いの結果、石田三成は戦い下手とレッテルを貼られ、豊臣内の武断派と呼ばれる加藤清正や福島正則との溝が深まる要因になりのちの関が原の戦いの原因にもつながっていったと、こいういう解釈をよく聞きます。
結構大きな影響ですね。
もし本の内容が戦いの真実だったら、
(調べると戦い方は秀吉から指示があったとする説もある。だったら三成はあまり悪くない?)
秀吉の弟子と自称し、独自の美意識をもっていた石田三成が定石どうりに城攻めを行いっていればこの戦いは起こらず、
武断派と呼ばれる武将との溝も深まらず歴史が変わっていたかもしれない。
しかし、石田三成のこだわりと大軍勢を率いているという余裕からくる油断に成田長親と忍城武将団に、してやれれた。
簡単にまとめるとこうなるのでしょうか。
ん?これでは、石田三成がこまったちゃんだったからになってしまう。
いや
違う。
違う。
違う~。
若き日の石田三成が、もてる智謀のすべて傾けた城攻め。それを坂東武者 (東国の武将をこう呼ぶ。昔から勇猛で強いといわれていた) と呼ばれた子孫が城を、いやむしろそのプライドを守ろうと命をかけた、
これぞまさに男と男のプライドのぶつかり合いだったと・・・。
こういう戦いの話だとおもっていただければ
(やっぱり三成がこまったちゃんだったのでは・・・。いっいや違う~)
(名誉のために、石田三成はかなり優秀な人だったそうです。豊臣秀吉の天下取りに裏方として貢献した。その独自の価値観に惹かれる武将もいた。自分の領地では善政を敷いていたため領民から慕われていた。なにより豊臣のためにと徳川家康と戦ったその律儀さ。すばらしい人だったんだろうと。たぶん若干クセが強いというか頑固というか理屈っぽいうところがあったのでしょうか?これは想像)
小説を読んでみて、いままで読んでおもしろいと思った歴史小説は、司馬遼太郎の小説でしたがそれに劣らずおもしろい。
おもしろい歴史小説ベスト3にあげてもいいくらい、話の流れがおもしろい。
本の帯に、『ハリウッド映画の爽快感』とか、『私のベスト小説です』とか書いてありましたがこれにたがわぬ内容でした。2009年の第6回本屋大賞第2位にもなっている。
読んで損はしないのではと思います。(歴史ものが駄目な人には、どう感じるかわかりませんが・・・)
この本は映画化もされるそうですが、話の中に水攻めのシーンがあり、この前の津波被害の影響で公開が2012年秋に延期になったそうです。
話の内容がいいだけに、映画のクオリティにも期待したいところです。
映画になったとたん期待ハズレだけにはならないで欲しいです。
過去記事
戦雲の夢 司馬 遼太郎 戦国時代の話で長曾我部という人の話がでてきます。
四百年の長きにわたる歴史の封印を解いたのは、東京から来た会計検査院の調査官三人と大阪下町育ちの少年少女だった 文庫 プリンセストヨトミ