2011年6月24日金曜日
最近雨つづきですが、もし近くにこんな人がいたらもしかして・・・ 文庫 死神の精度 伊坂幸太郎
<あらすじ>
①CDショップに入り浸り
②苗字が町や市の名前
③受け答えが微妙にずれている
④素手で他人に触ろうとしない
そんな人が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う6つの人生
彼が仕事をするときは、いつも雨がふっている。死神・千葉がである。彼の仕事は、対象の人間に接触し「死」を実行するに適しているかどうかを判断し、報告する。「可」か「見送り」。対象者に近づくためにもっとも適した人物像になりすまして近づいてくる。そんな死神が登場する話で、死神・千葉の視点で物語が展開していく。
死神といったら、こっそり対象者の目の前にあらわれ「お前は、死ぬ」と宣告し、人間が悩み苦しむのを観察してあざ笑う。というようなイメージをもっていたが、この話にでてくる死神はまるでサラリーマンがたんたんと日々の作業をこなすがごとく人の『死』の判定をするので、なんだがあっさりしていてなおかつすっきりした印象をもった小説でした。
この小説は、6つのエピソードからできていてそれぞれ独立した話になっているのでどれを読んでも楽しめるようになっていますが、最初から順番によんでいくほうが最後の話がより楽しめます。(私は思わず『あっ』となりました。)そんなにページも多くないので、読み出したらあっという間に読み終えることができると思います。
伊坂幸太郎の小説では、他の小説のキャラクタが再登場するのがお決まりみたなものですが、この作品では『旅路と死神』というエピソードに、『重力ピエロ』にでてくるハルらしき人物が登場します。事前に『重力ピエロ』を読んだことのある人は思わずニッコリする場面ですね。
この小説は、映画にもなっています。が、私は小説版のほうがおもしろいと思いました。映画版はいまいちの気がしました。ただ人それぞれなので、小説版と映画版を見比べるのもひとつの楽しみだと思います。
この小説を読んでいて、印象に残った文章を紹介します。
『わたし、前から思っていたんですけど、人間が作った最悪の物って、戦争と除外品ですよね』
『誤りと嘘に大した違いはない』
『微妙な嘘は、ほとんど誤りに近い』
そういわれるとそうかなぁ~と、なんだか納得しました。